AIにワクワク?ドキドキ?|会話型AI構築プラットフォーム『miibo(ミーボ)』の生みの親・功刀雅士さんとの座談会【最終回/全5回】

2023.07.11

「もし自分がもう1人いたら、その人にお仕事をしてもらって、自分は好きなことだけをしたいなあ」。そんなことを考えたことはありませんか? それが夢物語でなくなる日が近づいてきました。AIによるチャットボットサービス「ChatGPT」の登場が理由のひとつです。会話を生成する「ChatGPT」のような会話型AIや、画像生成AIなど、今、AIが最高に注目されています。AIの進化によって、どんな未来になるのかワクワクする期待がある反面、私たちの仕事がなくなるんじゃないかドキドキする不安もあります。そんなワクワクやドキドキ、AIによる会話やチャットボットの開発を行ってきた人たちはどう思っているのでしょうか。

今回は、誰でもGPT-4を利用した会話型AIを構築できるサービス『miibo(ミーボ)』を生み出した株式会社miibo代表の功刀雅士(くぬぎまさし)さんと、ロボット・スマートスピーカー・チャットボット向け会話シナリオ開発を行う株式会社こころみ代表の神山晃男、取締役COOの森山裕之が、「会話型AIでできるワクワク・ドキドキする今と未来」をテーマに話し合いました。

ワクワクが勝つかドキドキが勝つか、未来をつくるのはAIなのか私たちなのか、それともぜんぶごちゃまぜで共存していくのか……、3人の話は尽きません。5回連載の「AIにワクワク?ドキドキ?|会話型AI構築プラットフォーム『miibo(ミーボ)』の生みの親・功刀雅士さんとの座談会」の第5回は『人間?AI?これは誰? これから『miibo』でできること』です。ぜひ最後までお楽しみください。

<目次>
AIにワクワク?ドキドキ?座談会
第1回 AIを利用して人間の会話を模倣できる技術「会話型AI」の可能性  配信中
第2回 会話型AI構築プラットフォーム『miibo』の魅力はズバリコレ!  配信中
第3回 会話型AI構築プラットフォーム『miibo』と「こころみ」の相乗効果 配信中
第4回 AIと共に歩む未来の世界 仕事も私もどうなるの? 配信中
第5回 人間?AI?これは誰? これから『miibo』でできること  ←★今回はココ★
※3人のプロフィールは文末をご覧ください。

こころみが、miiboを使って最終的につくりたいものは?

神山    最終的にmiiboで何がつくりたいかと聞かれたら、私は聞き上手なロボットですね。聞き上手な、自分史のインタビュアーをやれるロボットをつくりたいです。

功刀    なるほど。

神山    ロボットが相手なので、墓場まで持っていくような話も入っている自分史がつくれると思うんです。miiboなら聞くのも上手でしょうしね。

功刀    そうですね。ロボットにインタビューされたら自分もすべて吐き出せそうだし、そうすることで何か気づきがありそうですね。

神山    気づきは絶対ありますね。あとは、他人の分身AIもmiiboでつくってみたいです。

功刀    他人の分身AIですか?

神山    他人というか、自分の親ですね。われわれの自分史のデータをもとに、その人を再現したいと思っています。そういうのは今でも、ある程度できますよね?

功刀    できると思いますね。そういえば神山さんが会社をつくられたのって、ご自分のご両親がきっかけだっておっしゃってましたよね。

神山    そうなんです。もしうちの両親の分身AIをつくるなら、元気なうちに不足しているパラメータを埋めておかないといけないですね。

功刀    分身AIをつくるためにね(笑)

神山    分身AIをつくるために必要な要素ってなんなんですかね。その質問事項をちゃんと考えたいな。

功刀    その質問も、聞き上手なAIがやるんでしょうね。

神山    そうですね。今こころみがつくっている『親の雑誌』では、これまでその人が何をやってきたのか、どのように人生を送ってきたのかを語り口調でまとめていくんです。趣味や座右の銘についても語ってもらいます。でも、その中のどんな要素があれば、miiboでその人を再現できるのかは、はっきりとはわからないですね。突き詰めていけば、その人らしさとは何か、という話になるかと思うんですが。

功刀    実は僕も最近それについて考えてたんですよね。miiboでは、シナリオの各ノード(*1)とユーザーから得られる情報によって動的に変化させるmiibo独自の手法を「動的プロンプト」と呼んでいます。僕はそのmiibo独自の手法を用いて、より人間らしさを再現しようと試みています。

神山    ふむふむ。詳しく教えてください。

功刀    たとえば、従来のチャットボットに対して「大学時代に何が一番印象的な経験でしたか?」と聞くとします。そのチャットボットの中に、<大学時代に一番印象的だったのはサークル活動だ>と入っていれば、「サークル活動が楽しかったです」という答えになりますよね。でも普通、人間ってそれだけじゃないんですよ。人間は、用意されたQ&Aに沿って楽しかったサークル活動を答えるのではなく、さまざまな思い出によって構成されたバックグラウンドを踏まえて、応答を行いますよね。

神山    確かにそうですね。本当に楽しいだけじゃなくて、辛かったことや大変なことがあったからこそ、印象的だとか楽しいという感想になったかもしれないですしね。

功刀    大切なのはそのバックグラウンドなので、「サークル活動が楽しかったです」という答えに対して、バックグラウンドをプロンプトの内容に盛り込めるようにしたいんですよ。今は、miiboで設定できるプロンプトはシナリオの各ノードとエージェント全体にしか設定できません。でもいつか、1つ1つの受け答えに対してプロントを設定できるようにしたいですね。

神山    おお〜。

功刀    そういうデータ構造をつくっておくと、バックグラウンドを踏まえた回答になりますから。

神山    うわー、なるほど。そうですね。

功刀    そういう思考回路でこの回答になるんだというのをプロンプトに入れておいてAIに再現させると、まさにその人間っぽい応答になるんだな、と思います。

神山    すごいですね。

功刀    ただのQ&Aって、どうしても薄いものになってしまうんですよ。

神山    AIはただ機械的に答えに近いものを持ってきますからね。

功刀    ChatGPTも同じです。結局、確率論で答えが導き出されるので。

神山    そうですね。

功刀    だから、その人らしさを、プロンプトからにじみださせたいですね。

神山    バックグラウンドがあれば、一問一答にはならずに会話がはずみそうです。

功刀    その通りだと思います。「サークル活動が楽しかったです」という回答には、具体的にどう頑張ってきたのかというバックグラウンドがプロンプトとして詰まっているので、深掘りして聞いても会話を続けることができます。どういう経緯でその回答になったか、ということをベースに会話が展開されるといいなと思いますね。

神山    それって、こんな理解で合ってますか? 大学時代にサークル活動でめちゃくちゃがんばった人がいますと。その人は、死ぬほど辛い思いをしたけど、頑張った経験があったから今の自分があると思っています。

功刀    はい。

神山    Q&Aで「その人の経験は?」と聞かれたら、「こう頑張ったんだよ」という答えになっています。それをmiiboにプロンプトとして入れておくと、誰かがその人のチャットボットに「今ちょっと辛くて逃げ出したいんだけど、どうしたらいいかな」と相談すると、「ここは根性だ!」という回答をしてくる。そんなイメージですかね。

功刀    そうですね。Q&Aで大学時代にサークルを頑張ってきたことの回答は得られると思います。でも、この回答の裏側には、大学時代どう頑張ってきたかということや、生い立ちなどのコンテキストをプロンプトで詰めることができるんですよね。そこで相談者が何か深掘りしたら、ただサークルのことを返すんじゃなくて、どういう経緯でこの回答が生まれているのかということをベースに会話が続く。そうできるといいなと思います。

神山    それって難しそうですね。

功刀    難しいですよね。Q&Aというのはインタビュー形式なので、応答を入れるんですけど、その応答にその人の歴史を紐づけるということですね。

神山    そうか、そういうことか。

功刀    歴史の中を検索していって、アンサーとトピックが同じような歴史を拾って、それをプロンプトに入れるとかというのはあるかもしれないですけど、歴史(バックグラウンド)は部分的に切り取ってプロンプトに入れられるものではなく、むやみに切り取るとその人の人間感を再現できなくなるんじゃないかと思います。
アンサーに紐づく歴史をシステマチックに抽出してプロンプトに入れるという仕組みをつくる必要があるのですが、その抽出作業は人間らしさを削ぎ落としてしまう可能性がある行為なので、ちょっと難しいですね。

神山    うんうん。

森山    そこのメカニズムは難しいけど、できたら面白いですね。

*1 ノード…シナリオにおける会話の発話を行う1単位

他人の分身AIと役者の共通点

神山    考えてみると、Q&Aのアンサーにバックグラウンドをプロンプトとして紐づけるというのは、役者さんが台本から演じる過程に近い気がします。

功刀    おお、そうなんですか?

神山    Q&Aのアンサーの部分が台本のセリフだとしたら、そこに書かれていないバックグラウンドやその人らしさというものを思い描いて演じるのが役者さんですからね。

功刀    本当にそうですね。

神山    だとすると、役者AIみたいなものをつくってそれをmiiboに反映させたら、他人の分身AIというのはできるかもしれないですね。

功刀    確かに、しくみは一緒ですね。

神山    だからアンサーにバックグラウンドプロンプトが紐づけられていない今は、大根役者が抑揚をつけて喋ってみましたレベルになっちゃってるんでしょうね。

功刀    今のままだと、Q&Aではプロンプトにある近しい言葉をただ出させる、というだけなんで、そうですね。

神山    本当に面白いですね。今はできないけど、ちゃんと分析してやりきったらできそうな感覚がありますね。

功刀    ですね。プロンプトを作成する際に、ただAIの応答を仕込むのではなく、応答の源となるバックグラウンド情報を一緒に付与できるシステムを入れるのかな。

神山    生身の人間からいきなり抽象度の高い部分を引き出すのは原理としてできないから、Q&Aのアンサーから、抽象度の高いレベルにアクセスして、それを再現させるということですね。例えばある人にとっての「犬」というのは、ChatGPT一般で意味付けされるようなかわいい、哺乳類、といったことを超えた、相棒のような、何よりも強い愛着を示すものであるという意味が含まれている。だからその人が「犬」と発言するときは、普通のChatGPTが発言する犬とは違う使い方をするような。

功刀    そうですね。そんなイメージだと思います。

神山    それやりたいな。それができたら本当に、その人らしいものを再現する、ということに近づく気がします。

功刀    人間もそうかもしれないですね。人って、何か質問されて答えようとしたときは、まず昔の経験を思い浮かべて言葉を紡いでるはずじゃないですか。本能を除くと、人間はそういう構造な気がします。今の簡単なプロンプトではまだそれを表現できないけど、できるようになったらAIがかなり人間に近づきますね。

神山    そう思います。

功刀    やってみたいですね。聞き出すというところはこころみさんが強いですし、miiboでそれをつくったら本当に面白いことができそうです。

800人のデータを持ったAIと、1人のログとしてのAI

神山    ChatGPTが出たとき、先ほど話したように、われわれは自分史のインタビュアーであるロボットか、自分史製作者の分身のロボットをつくるということが、まず発想として出てきたんですよね。

功刀    そうですよね。

神山    でも実際、今はそれをやろうとしてはいないんです。ピンと来ていないというか、今のままやってもうまくいかないなと思っています。ただ、こうしてお話していて、それがどうしてなのかわかった気がしますね。

功刀    なるほど。

神山    もう1ステップ上にいかないと、つくりたいものがつくれないんだと思うんです。

功刀    技術的にも、ってことですよね。

神山    そうですね。

森山    ところで、他人の分身AIが実現可能になったときにつくりたいのって、特定の誰かなんですかね。もはや僕たちは新しい人間をつくりたいのかな、くらいに思えてきました。

神山    それは悩ましいし、どっちもありだとおもいますね。

森山    おお、どっちもありですか?

神山    今こころみには、800人以上の高齢者の方にお話を聞いてきた実績があります。つまり、800人以上の人生のデータがあるんですね。だからそれこそ、技術的なことがクリアできたら、800人のAIをつくることもできるし、800人全部が一体になったAIもつくれます。それは面白そうな気がしますね。

功刀    確かに。

神山    あとはたとえば、昭和10年から20年の間に生まれた人のAIもつくれるし、男性女性モデル、みたいなのもつくれます。そうすると、ある相談事を投げかけたときに年代によってどう回答が変わってくるのか、ということがわかりますね。それは、やってみたいこととしてありますよ。

功刀    そうですね。それはできますね。

神山    でも、2人とか3人だけくっついるAIは気持ち悪いでしょうね。気持ち悪いし、やりたくないですね。

功刀    自分史の延長としては、AIが1つの解ですよね。ログとしてのAIです。きっと、将来の博物館にはAIがいるんだと思います。

神山    そうですね。いるでしょうね。

功刀    今生きている孫正義さんは、次世代のソフトバンク博物館にAI孫正義としているんじゃないですかね。

神山    あはは。きっといますね。

功刀    ご先祖にも会えますね。

神山    会えます。AI化したご先祖に相談するとかもできますよね。今の技術でも、本人のエピソードを話してもらうだけならぜんぜん問題なくできますからね。

功刀    できますね。

神山    そこに、もっとバックグラウンドを反映させた反応が生み出せるようになったらいいですね。たとえば2023年の巨人ファンの人が、2200年の巨人の試合を見てリアクションをするんです。それがプログラミングされたようなリアクションじゃなくて、その人らしい反応が出てくるような形でできたらいいですよね。

功刀    プログラミングみたいにこう聞かれたからこう答える、という感じじゃなくてってことですよね。

神山    そうですそうです。巨人ファンだから巨人が勝ったら喜ぶというプログラミングではなくて、その人がなぜ巨人を好きかというバックグラウンドからにじみでた言葉を紡がせたいんです。<強いから巨人が好き>というバックグラウンドがあるのなら、巨人が万年ビリなのを聞いてある日突然「俺、もう巨人ファン辞めるわ」と言い出すとか(笑)

功刀    それって人間味ありますね(笑)不謹慎な話かもしれないですけど、お墓に行ったときに、無機質なQ&A返されてもイライラしちゃうかもしれないですもんね。

神山    イライラしますね。故人との違いに敏感になりそうな気がします。

功刀    経験からにじみでた言葉を紡ぐAIなら、もしかしたらお墓にきた人も話すかもしれないな。

神山    おっしゃる通りですね。

功刀    AIで、その人の資質というか人間味がばーっとにじみでてくるようなものって、あるようでなかったんですよね。それって価値があることだと思います。

神山    ただ、そういうバックグラウンドを用意するだけで、人間味として十分なのかどうかがまだわからないですね。もしかしたら、叩いてみて怒るかどうかとか、そういうパラメータを用意しないといけないかもしれない。

功刀    それは用意しないといけないかもしれないですね。でも、人間味が経験からにじみでるものだとしたら、経験さえあれば人間味は再現できるものではないでしょうか?

神山    そうですね。再現性はあるでしょうね。今あるものでも、ある程度まではいけると思うんですけど……うーん、実際のところはよくわからないですね。人間味というものをつくり出す要素は経験だけなのか、それ以外にも何かあるのか、あるいはないのか。

功刀    誰かを再現する上で、その人の経験とDNAはどっちが強いかという話もありますね。

神山    おお、確かに。将来的にはDNAと経験を読み込ませて、その組み合わせによって再現するというのはあるかもしれないですね。怒りやすいDNAを持っている人に話しかけると、8割くらいの確率で怒る、みたいなのはありえますよね。でもたとえばその人が、怒らなかったために成功した経験があったら、怒る確率が6割まで下がるとか。

森山    自分の子どものDNAを入れてロボットをつくったら、子どもが将来どうなるのかわかっちゃいそうですね。

神山    それは怖い(笑)

功刀    怖いですね。でも、できるようになったら、すごく面白そうです。

本体がいなくなったあとも残るAI

神山    もし本当に、誰かの再現であるmiiboがつくれるとしたら、私はそのmiibo同士で話したら何が起きるかというのを見てみたいですね。

功刀    それはまさしく、ロックマンの世界ですね(笑)

神山    そうそう、電脳世界です。AIが得た情報は本体に戻るというのが功刀さんの求めている拡張だと思うんですけど、本体が死んじゃったあとも、電脳空間だけ残るみたいな世界もありえますよね。

功刀    ありえますね。

神山    人類がみんな死に絶えたあとにここにいる3人のmiiboだけが電脳上に残っていて、会話してるとか。

功刀    あはは。それは面白いですね。

神山    本体がいなくて電気代が払えないから、勝手に働き始めるとかね。電気代を稼ぐため、miiboが自発的に働くんです。

功刀    電脳空間に生存するという本能があって、それで稼ぎ始めるということですよね。

神山    プロンプトにたぶんそうやって書いてあるんでしょうね。そうなったらそのmiiboはもう生きてるって言えるんじゃないか。

功刀    <制約条件 電子脳空間で生き続ける努力をする>というプロンプトかな。

神山    そうです、そうです。昔だったらただのSFだったのが、今は、理論上はそれが成立しうる世界になったんですね。面白いな。

功刀    こういう話って、面白いという人と、なんでAIを残す必要があるんだという人にわかれる気がします。

神山    わかります。

功刀    たとえばクラシックギタリストの村治奏一さんは、たぶん躊躇なく自分のAIをつくったと思います。でも中にはぜったいに自分のAIなんて残したくない人もいる。そこの違いってなんなんでしょうね。

神山    うーん、私はそういう意味でいうと、けっこうニュートラルかもしれないですね。自分のAIをぜったい残したいという思いがあるわけではないです。ただ、好奇心としてとりあえず残してみたら面白いんじゃないかとは思ってますけど。

功刀    それは、僕も近い考え方かもしれないです。miiboっていいつつ、子孫的な意味合いがあるのかな。なんなんですかね、分身AIを残したいという気持ちは。その答えはまだ出てないですね。

神山    ぜったい残したくないみたいな人がいるのも、気持ちとしてはわかりますよね。自分が死んだあとに自分ぽいものが生き残るのは気持ち悪いというのは、感覚としてはあると思います。

功刀    そう感じる人もいますよね。

森山    やっぱり、自分ぽいから嫌なんじゃないですかね。そうはいっても、自分じゃないですから。

神山    ああ、なるほど。

森山    自分が残るんだったらいいけど、自分っぽい何か別のものだと、気持ち悪いなという気がします。

神山    確かに。乗っ取られるとか、影みたいなやつだけ残るみたいなイメージになっちゃうのかな。

功刀    自分の思想にある程度確信や自信があって、何か残したいものがある人とかは、たぶん間違いなく残しておきたいでしょうね。

森山    伝えたい何かがある人は、残したいということですね。

神山    そうですね。それは間違いないですね。

miiboの次のステップ

功刀    今後のこととしては、僕はAIを販売できるようにしていこうと思ってます。ユーザが、自分でつくったAIをマネタイズできるようになるということですね。

神山    おお〜。

功刀    村治さんのような有名な方だと、ファンコミュニケーションができるというのが分身AIをつくるメリットだと思うんですけど、他の人はそうはいかないんですよね。特に有料プランでAIをつくろうとすると、身銭を切ってつくらないといけない。

神山    現時点では、そうですよね。

功刀    でも、データストア機能を使って専門知識をAIに入れるということは、付加価値をつけるってことなんですよ。自分しかわからないことを知っているAIには価値があるし、それを提供すれば対価を得られると思います。そういう営みをみんなができるように、マネタイズして提供できる仕様というのをmiiboの有料のサブスクリプションとして、今進めてます。

神山    いいですね。

功刀    あとは、言わせたくないことを言わないようにしたいという要望があるので、それも実装したいですね。

神山    そうですね。他にも何か次のステップとして考えてることってありますか?

功刀    実は今、Microsoftのスタートアッププロジェクトみたいなのに応募してます。通るとMicrosoft Azure(*2)のOpenAIサービスが使えるようになるんです。Microsoftは、Azureがもっとセキュアだって言っているので、今後はAzureのOpenAIサービスも使えるようになるかな、と応募の結果を待ってるところです。

神山    miiboはもともと、セキュリティに関しては強いですよね。

功刀    ありがとうございます。

神山    web上でChatGPTに直接情報を入力していくのは、やっぱりリスクがあるじゃないですか。でもmiiboは、そこのリスクがいったん遮断されてますから。データストア機能にしても、入れたデータはどこにも行かないですよね。

功刀    そうですね。データはmiiboが保持していますし、ファインチューニング(*3)しないので、AIにデータを学習させるわけではない。ChatGPTのAPIにはいくんですけど、ChatGPTは学習しないということを宣言している(※)ので、大丈夫だと思います。

神山    うちも、miibo partnerへの加入を公開してから、たくさんお問い合わせいただいて、実際にお客様への納品をしているわけですが、皆様本当に満足していただけているのがわかるんですよね。満足というより、ここまでできるのかという驚きかな。改めてmiiboはすごいなと思っています。もちろん、まだまだポテンシャルを感じています。

功刀    嬉しいですね。

神山    今のmiiboの実力すら、われわれはまだ活かしきれていないと思うんです。さらにmiiboが今より発展していくというのが見えているので、めちゃくちゃ楽しみです。

森山    前回お伝えしたの面接botも、最初につくったのは本当にシンプルなものだったんですよ。そこに、お客様からこういうのはどうかってご提案をいただいたのを反映しようとすると、miiboはいちいち答えてくれるんですよね。それが面白くって。

神山    そうなんですよね。

森山    今後は、miiboでクレーム対応もやりたいですね。柔らかくお客様を扱えるエージェントをmiiboでつくっておけば、人間がやるよりずっと効率的ですから。そういうのがどんどん生まれていくというのが、すごく面白いです。

功刀    5月の「『miibo(ミーボ)』で始めるGPT会話AI(チャットボット)構築セミナー」も反響が大きかったです。

神山    とても好評でしたね。

功刀    今ってもう、僕の発想になかったものがmiiboでつくられていってるんですよね。だから、miiboの可能性について、自分もわかっていないことをわかりたいと思っています。これからもこころみさんと一緒にノウハウを高めていきたいなと思っているので、どうぞよろしくお願いします。

神山・森山    よろしくお願いします。

OPENAI 「会話を学習させないモード」
*2 Microsoft Azure…マイクロソフト社が提供するクラウドサービス。
*3 ファインチューニング…訓練用のデータを追加して訓練し、特定のタスクに適応させるための手法。

最終回までお読みいただき、ありがとうございました。miiboについて詳しくお知りになりたい方は功刀さんの会社「株式会社miibo」のウェブサイトや、miiboの使い方がわかりやすく説明されている『miibo(ミーボ)ではじめる会話AI構築』をご覧ください。
こころみがmiiboで作成したチャットボットともお話してみてもらえるとうれしいです。
▶︎シナリオタイプ「面接AI さくら」
▶︎雑談タイプ「AIスナック あけみママ」
▶︎Q&Aタイプ「サービス紹介 ろみ」(右下の「AIに相談する」をクリック)
ではまた次回の対談・座談会をお楽しみに♪

プロフィール

■功刀 雅士●くぬぎ まさし
株式会社miibo代表取締役社長 
会話型AI領域の開発に10年以上に渡って取り組む。ヤフー株式会社でソフトウェアエンジニアのキャリアをスタートし、その後様々な企業でソフトウェア開発に従事。サラリーマンエンジニアをする傍ら、個人で2020年にmiiboをローンチし、2023年に法人化。

■神山 晃男●かみやま あきお
株式会社こころみ代表取締役社長
1978年長野県生まれ。慶應義塾大学卒業後、コンサルティング会社勤務を経て、投資ファンドのアドバンテッジパートナーズに10年間勤務。コメダ珈琲店、ウイングアーク1st等を担当。2013年「すべての孤独と孤立なくす」ことを目的に株式会社こころみを設立。一人暮らし高齢者向け会話サービス「つながりプラス」、親のための自分史作成サービス「親の雑誌」やインタビュー社史作成サービス「創業の雑誌」を提供する。2017年より、高齢者会話メソッドによるロボット・スマートスピーカー・チャットボット向け会話シナリオ開発サービスの提供を開始。株式会社NTTドコモが提供するクマ型ロボット「ここくま」の開発支援や、モバイル型コミュニケーションロボット「ロボホン」を活用した自分史作成のサービスの企画を担当。
■森山 裕之●もりやま ひろゆき
株式会社こころみ取締役COO
京都大学大学院情報学研究科修了。
P&G にてITプロジェクトリーダーを経て、ライフネット生命に参画。B2Cのコンタクトセンターの立上げ・運用をリード。お金のデザイン社にて、資産運用サービスTHEOの立ち上げとカスタマーエクスペリエンスの責任者として顧客接点の設計、運用を統括。Marketo社では、B2Bマーケティング全般とユーザーコミュニティ立ち上げ・運用、カスタマーマーケティングをリード。WalkMeの日本法人立ち上げでは、B2Bマーケティングの立上げ、運用をリード。2021年こころみに参画。[IT+DX] × [人・組織] × [カスタマーエクスペリエンス] × [デジタルマーケティング]の領域での事業・サービスの構築が得意領域。