孤独について その2 孤独が体を蝕む
2014.03.26
孤独は、物理的に体を蝕みます。
前回、孤独について その1 孤独とは何かというテーマで書きました。
今回は全3回のその2、孤独が体を痛めつけ、死に至らしめるメカニズムについて考えてみたいと思います。
前回、孤独とは孤独感を覚えることだ、とお伝えしました。
昔、人類が一人では生きられなかった時の感覚。
一人でいると死ぬぞ!と心の痛みとして緊急通報が鳴ることが、孤独感です。
でも、今の世の中は孤独だったとしても衣食住に困るわけではありません。意味のない緊急通報なのです。
実は、孤独が体を蝕むメカニズムは、この意味のない緊急通報にあります。
緊急通報自体が体にダメージを与えるのです。
皆さん、自宅、学校や職場で火災報知機が誤作動して大変な目にあった経験はありませんか?
私は以前働いていた職場でスプリンクラーが誤作動したことがありました。
会議室が水浸しになり1週間使えなくなるという大事故でした。
孤独とは、そのような状況だ、とお考え下さい。
常に頭の中でサイレンが鳴り続け、スプリンクラーから水が出続けているようなものです。
どうなるか。
1つ目。
あまりにうるさいために、他の事ができなくなります。つまり処理能力が落ちます。
自己制御機能・自己調整機能が低下します。
実際に孤独感を覚えている人は、そうでない人やそうでない時に比べて筆記試験などのスコアが有意に低い。
また免疫力の低下や社会性・規律が低下することにより、病気や怪我の確率もあがります。
2つ目。
脳は緊急避難的な行動をとります。
例えば食料等が今後充分に得られない。いつ死んでもいい準備をせよ、と考え短期的に体が欲するものを得ようとします。
過剰な甘やかしが許容されます。
具体的には暴飲・暴食、運動不足、睡眠過剰などを誘発します。
これらが長期的に健康を損ねることはみなさんよくご存知だと思います。
私もよく知っています。
3つ目。
体の器官のレベルで、緊急臨戦体制に入ります。
すぐにアクセルを踏み込んで、あるいは逆にブレーキを踏めるように準備します。
自動車でいえばローギアのまま急加速、急停止を繰り返すような運転です。
血管や臓器には短期的に過大な負荷をかけるような命令が数多く出されます。
結果、細胞が傷つきやすくなります。
まとめますと、孤独感という名のサイレンが体に鳴り続けることにより、
自己制御機能・自己調整機能が低下。過剰な甘やかしを許容することなり、
更に細胞を酷使する。
長期的に、これらが生活習慣病や内蔵疾患、血管性の発作を誘発。
またアルコール依存症やうつ、睡眠障害を引き起こします。
高齢者の場合は更にサルコペニアや認知症の発症確率をかなり高めると言われています。
これが、孤独が肥満の2倍、死を引き起こすと言われているメカニズムなのです。
人間は一人では生きられないというのは比喩ではないんですね。
実は更に怖い話があります。
孤独は、慣れる。
最初は孤独感を覚えて辛いと思っていても、いつの間にかそれを感じなくなります。
人と話をしないのが当たりまえになり、1日じゅうだれとも話をしないのが普通になります。
ではそれは孤独ではないか。いいえ、孤独です。
本人の自覚がなくなるだけで、サイレンは鳴り響き続けます。
上記3つの体への害は続きます。自覚症状のない体の侵食が続くことになります。
慣れた上でどうなるかというと、孤独を強化する負のスパイラルが発生します。
孤独な状態→不健全な生活→駄目な自分という認識→社会による消極姿勢→孤独な状態
孤独な状態が、規律のない生活、自堕落な生活を呼び起こします。朝寝坊、暴飲暴食、運動不足の生活になります。
それによって自分は駄目な人間だ、生きる価値がなというネガティブな発想を呼び起こします。自己評価が低い状態です。
そうなると、社会に対して出ていこう、他人とコミュニケーションをとろうという気になりません。
自分の評価が低いと他人に会いたくなくなるのです。
結果孤独が再生産され、一度孤独になると益々他人と関わることが苦痛になります。
このスパイラルは非常に強固です。自分の意思で打ち崩すことが非常に難しい。
では、このスパイラルから抜け出るために、具体的に何をすればいいのか。
次回は「孤独について その3 孤独に打ち勝つには」、ようやく前向きな話をします。
お楽しみに!