実は孤独な老人ホーム
2014.01.17
今日は有料老人ホームに入所しているある女性のお話です。
そこは超高級と言われる有料老人ホームです。
入会金だけで何千万円プラス毎月の管理費が数十万円という、普通では入れないところ。
大理石で覆われたエントランスをくぐると壁一面のガラスから太陽の明かりが差し込んできます。その先には広い中庭。
24時間常駐の管理人さんがいて、名前を言って確認を取らないと中に入れてもらえません。
24時間常駐の管理人さんがいて、名前を言って確認を取らないと中に入れてもらえません。
中に入ると、きびきびとした礼儀ただしい若いスタッフが歩いており、会う度に会釈をしてくださいます。
お部屋も超豪華。素敵な調度品も備え付けで、冷暖房ももちろん完備。なにより広い。大きなバルコニーも。
食堂と呼ぶには申し訳ないほど立派なレストランがついていて、毎食、和洋中のどれでも好きなものを食べられます。
その他にもジムやレクリエーションの施設があるのはもちろん、コンサートホールもあって著名なオケが来ることもあるそうです。
最高の老後がそこに待っている。
羨ましい限りです。
それは確かなのですが、どうもその女性は、必ずしも手放しで幸せでもなくて、
実はお悩みがありました。
それは人間関係。
まず、新参者は友達を作るのに時間がかかります。
建物が出来た時に入った人達は、その人達だけでコミュニティを作るので、急に新人が入っても輪に入れないのです。
そして頑張って受け入れられても、何かあって誰か一人とでも喧嘩をしてしまうと、居づらくなってしまう。
集団自体は決して動かないため、一度揉め事を起こしてしまうと、そこから挽回するのはかなり難しいようです。
そもそも高齢者の方は、今までの人生の蓄積から確固たる自分を持っていますから、どうしても相容れない部分は出てきます。
更に耳や記憶力の問題で、他人と円滑に話を盛り上げるということ自体が難しくもなってきています。
そんななかで決して失敗できない人間関係を、部屋を出てから戻るまで1日中維持しなければならない。
趣味の集まりなどもあるようですが、そうした緊張感を思うとなかなか気分が乗らない日もあるとおっしゃります。
でもそんな悩みを打ち明けられる人もなかなかいない。
スタッフの人達に相談しようにも、若すぎて話も通じなさそうだし、
いつも親切にしてくれているのに迷惑かけては申し訳ないという気分になってしまう。
たまに来る息子に、何千万円もかけて親孝行したのにとも思われたくない。
そんなわけでがんじがらめになってしまう。周りから見れば幸せな老後そのものだから、誰に不満を言うこともできない。
全く逃げ場のない環境。それが一生続くことが確約されている。
少し大げさに聞こえるかもしれませんが、そんな状況が実は存在するようです。
沢山人が周りにいるのに、ある意味で孤独だったのです。
上記は少し極端な例ですが、老人ホームに入れば話し相手に困らないというのは幻想で、
実際は実社会と同じかそれ以上に対人関係能力が必要とされるようです。
さて、、、この方の場合、どうされたか。
少し距離を置くために、数ヶ月間息子さんの元に帰ってのんびりすごされまた戻る、
というのを数年に一度、繰り返しているそうです。
そんな風に老人ホームの生活自体を少し客観的に見られるようにすると、
人間関係の悩みも大した問題でないと思える、とおっしゃります。
人間関係の悩みも大した問題でないと思える、とおっしゃります。
そんな考え方を身につけたら、お友達づきあいも問題なくできるようになったとか。
確かに誰でもひとつの場所にずーっといたら、それだけでも息が詰まりますよね。
工夫して、賢く自分の気持ちを守ることでよい環境に身を落ちつけられる。
よい老後を迎える準備とは、何かあった時に臨機応変に自分を満足させる「考え方」を身につけること。
そんな風に思いました。