「呼び寄せ症候群」
2013.10.02
「呼び寄せ症候群」というタイトルのブログを拝見致しました。北海道でクリニックを運営されている先生のブログです。
呼び寄せ症候群とは何か。
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これは「田舎に住む高齢の方が、様々な事情で息子さんや娘さんの住む都市部に呼び出されて住むようになって、弱ったり、認知症が進んだりする状態」を言います。
もちろん息子さん、娘さん達は、年老いた親を気遣い、自分の近くに置きたいという思いですし、呼ばれる親にしても身内と住む事は安心もあるでしょうし、お孫さんの顔も見られるようになるといった事もあるのだと思います。
しかし多くの場合、高齢者の方は今までの生活、友人、地域や物語から分断されてしまい、住みなれない都会に身を置く事になります。
友人も居なければ、知らない大きな町では何処に行くのも大変です。
人によっては「危ないから」と言われ、家人が帰るまでマンションやアパートで何もしないで過ごしたりしますし、病気があったり、介護が必要だと施設や病院に入る事になります。(後略)
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あるな、と思います。
近くに呼ぶことでいざというときに安心、病院にすぐに連れていける、世話ができる、といったメリットは当然大きいのですが、
実はご本人にとって最も重要だった、友人関係や地域のコミュニティ、住み慣れた家の安心感といったものを失ってしまい、健康に暮らす為に一番重要な「元気でいられる気持ち」を失ってしまうケースということでしょう。
友人や趣味の場を失うことで外出の機会が減ると、それが原因で身体能力が落ち、益々外出が億劫になるという悪循環に陥ります。
それまで自分の世話を自分で全部見ていたのが他人に頼ることで、自立心を失い、できることができなくなるということもありそうです。
田舎暮らしだった方が都会に出てくれば、その環境自体がストレスを生むこともあるでしょう。
息子さん・娘さんにとって見れば、遠くにいることの心配がまず先に立ちますが、親御さんの気持ちまではなかなか配慮できません。
こっちの気持ちも知らずにわがまま言って、となりがちです。
現在、事業を進めている上で強く感じるのは、「今まで住み慣れたこの家にこれからも住みたい」という高齢者の方の強いお気持ちです。
内閣府が平成22年に行った「高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査結果」の中に以下の質問があります。
ー自分の身体が虚弱化したときに住まいをどのようにしたいと思うか(複数回答)
これに対して、以下のような回答となっています。
(高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査結果Q25回答結果を著者が抜粋・一部加工 単位%)
オレンジ色が今まで住んでいるところに住み続けたいという回答、青が施設に移るという回答、緑色が子供や親戚の家に移るです。
「自分の体が虚弱化しても」、今住んでいるところに住みたいというのが圧倒的に多く、子どもの家に移って良いと考えているのは、わずかに6%弱です。
単に長く生きたいとか、健康にとっていいという理屈を超えて、「今まで慣れ親しんだ自宅や地域にいつづけたい」という強い欲求があることが良く分かります。
子供世代としては、まずこのことを良く認識しておくべきでしょう。
私は、子供が親を呼び寄せることが、必ずしも悪いことだとは考えておりません。
状況は人それぞれであり、呼んだ方が良い場合も、呼ばない方が良い場合もあるでしょう。
無理に一人暮らしを続けることは、当然に緊急時の対応ができないリスクがあります。
一人暮らしであるが故に孤独・孤立が放置され、体調や精神に悪影響が起きたりそれが気づかれないことは誰にでもありえます。
重要なことは、まずご本人の希望を理解した上で、個別の事情に照らしたメリット・デメリットを比較すること。その際にご本人の精神面への影響も考慮すること。
「本人の精神・健康それぞれを見て、家族や金銭面の制約も加味して、何がベストか」を決める。
その上でその環境の中でサポートできることをしていくということではないかと考えます。
最後に。お一人暮らしを継続するという選択肢を選ばれた場合には、特にご家族が持たれる不安の軽減について弊社のお手伝いできる領域は大きいと自負しております。