波平の年齢と老後の誕生
2013.11.20
サザエさんのお父さん、波平の年齢などを見つつ、戦後の日本人の一生そのものがどう変わってきたのかを考えてみます。
前回のブログの続きで、勉強会資料からの抜粋です。
早速ですが、以下のアニメの登場人物達の年齢、当てられますか?
ちびまる子ちゃん さくら友蔵
機動戦士ガンダム ブライト・ノア
ドラえもん 野比のび助
明日のジョー 丹下段平
サザエさん 磯野波平
アニメの登場人物の年齢はいろいろなまとめサイト等があって見てると飽きません。
話題になったりすることも多いので、ご存知の方も多いかもしれませんね。
今回は取り上げませんが、ケンシロウやマリオ、星一徹は意外感あります。
以下、答えです。
ちびまる子ちゃん さくら友蔵 76歳
機動戦士ガンダム ブライト・ノア 19歳
ドラえもん 野比のび助 38歳
明日のジョー 丹下段平 45歳
サザエさん 磯野波平 54歳
いかがでしたでしょうか。
おそらくさくら友蔵は当てられたのではないかと思います。ブライトさんはちょっと別格なので外すとして、のび助はちょっと意外、丹下段平と波平は相当難しかったのではないでしょうか。
特に両方共孫がいる友蔵と波平の年齢差に驚きます。波平は働いているので60前と推察することは出来ますが、それでもあの外観は50代前半には見えません。
どういうことか。端的にいうと、作品の書かれた時代が理由です。サザエさんは1947年、ちびまる子ちゃんは1987年に連載スタートしています。
戦後の日本の一生をわかりやすく一覧にしてみました。
男女別に1947年、80年、2012年の平均寿命、多数の最終学歴、平均初婚年齢、第一児の出産年齢、一般的な定年の時期をプロットしたものです。あくまで平均ですし平均寿命ですので、47年生まれの人がこういう人生を送るわけではありませんが、当時の日本人をイメージするおおよその目安にはなると思います。
実は47年には、男性の平均寿命は50歳だったんです。図には載っていませんが、そもそも人類の平均寿命は19世紀まで30歳で、そこから100年あまりで倍以上まで伸びたという事実がありますが、特にこの50年あまりでも30年平均寿命が伸びているのです。
47年当時について言えば、乳幼児の死亡率が高い為に平均寿命が低く算出されるということはありますが、それでもそもそも定年というものが平均寿命よりも高いところに設定されており、子育てが終わってからの時間がそうそう多くないことが分かります。
それが80年代になると、定年も5年ほど伸びますし、若干初婚年齢も上がりますが、平均寿命が20年以上伸びています。それによって、子育て後25年、定年後でも10年以上の余剰時間が生まれています。
2012年でもその傾向は変わらず、時間が伸び続けています。今や子育て後(長子のですが)、30年もの時間があるということです。
波平も友蔵も、当時の平均寿命を少し超えたところだと見ると、同じような老け方をしているのがそれほど違和感なく見えてくるのではないでしょうか(もちろん波平の方がちょっと元気ですが)。
女性の場合でも状況は同じで、特に女性の平均寿命の伸びは著しいため、2012年においては子育て後35年の時間がある事になります。
前回お見せした人口推移のチャートはこの一人ひとりの人生が伸び、新たな時間が発生したことによって高齢者の層ができたため、というのがよく分かるかと思います。
そしてこの時間は、昔は存在しなかった時間なのです。「老後」の誕生です。
これは戦後からの復興、経済成長とあわせて、高度な医療・衛生や皆保険制度、年金制度の充実によって成し遂げられた、日本の素晴らしい成果だと手放しで賞賛すべきものと私は思います。人類史上、初めて生きるためだけに生きる必要のない時間をこれだけ作り上げることに成功したのです。
「老後」という実り多い時間を、大多数の国民が享受できる、素晴らしい社会の実現です。
超高齢社会を数字のデータから悲観的に捉えることは可能ですが、まず高齢化という現象が、人類史上の偉大な成果であることを認識すべきではないでしょうか?
日本語で「加齢」というのは英語ではAgingですが、加齢にはないニュアンスがあります。
それは、ワインや香水、スピーカーなどに対して使うAgingで、時を経ることで熟成され、丸みを帯びて複雑に味わい深くなることです。
年をとることを、そうした観点で捉え直し、高齢者が多い世の中であることを積極的に肯定すべきではないか。
そうした時間を30年も味わえる幸せな時代に生きているという前提にたって、その中でそれぞれの世代がどう生きるべきかを考える。
そんなポジティブな議論の出発点が望ましいのではないかと思います。
残念ながら議論すべき事柄は非常に多くありますので。