「自立」って何だろう? ~強いロボット、弱いロボット
2014.12.01
自立 人によって違う定義
高齢者やそのご家族と接していると、「自立」が非常に大きいテーマだと感じます。
大きいテーマである一方・・・
「いつまでも一人で暮らしていけるようにしたい」
「身の回りの世話くらいは自分でどうにかしたい」
「施設に入ることや介護サービスを受けることは他人の世話になるようで抵抗がある」
実際に声を聞いてみると、「自立」という言葉の意味やそのレベル感は人によってそれぞれ、ばらばらだということに気が付きました。
ある方は完全に自分の生活を誰の力も借りずに行うことだと考えているし、
あるご家族は離れて暮らす親御さんが、一人暮らしを続けることが自立していることと考えている。
またある方は、介護サービスは受けているが、自分はちゃんと自立して生活しているという自負を持っている。
では自立ってなんだろう?そんな風に考えている時に、あるロボット研究についての話を聞く機会がありました。
強いロボット、弱いロボット
ロボット研究は最近目覚ましい発展を遂げているわけですが、近年流行しつつある考え方に、
「強いロボット」、「弱いロボット」というものがあるそうです。
強い・弱いとは何か。ターミネーターの話ではありません。
例えば、公園のゴミ拾いロボットを考えてみましょう。
強いゴミ拾いロボットとは、例えば自動走行の足があってカメラとセンサーを持ち、ロボットアームをもっているロボット。
カメラでごみを発見し、自分の足で近づいて、センサーでごみの種類を判別し、ロボットアームでごみを拾い、ゴミ箱に捨てます。
このロボット一つあれば公園中のごみを集めることができます。
弱いゴミ拾いロボットとは何か。足とカメラはあっても、アームが付いていないロボットです。
ではどうするかというと、その代りにスピーカーを付けています。
ごみを見つけると、近くに人がいないか探し、その人に「すみません、そこにあるごみをゴミ箱に入れてもらえますか?」
とお願いして、人の力を使って目的を達成します。
人がいないと、目的が達成できない。そんなロボットです。
さて、当然強いロボットの方がよさそうに見えますが、強いロボットを作るのは大変です。
カメラとセンサーで、ゴミかどうか判断しないといけません。間違っても花壇の花や、寝ている犬(時には人)を摘み上げてはいけません。
ロボットアームは強力なものが必要になりますから、その分本体も頑丈で大きくなります。
転ぶと一大事。特に小さい子供がいるときなどは移動に注意するようなプログラムも必要です。そうなると、小さい子供を判別できるシステムも必要になってきます。
しかもロボットアームで何かをつかむときに、例えばうっかり鎖のついたものなどをつかんでしまうと、
そこからの修正が大変です。でもそれも自分で事前にプログラムしておかなければなりません。
弱いロボットは、そんな悩みはありません。
基本的に最低限の部品しか持っていないので人を傷付ける心配がなく、
困ったら周りの人間が何とかする、という設計なのです。
何といっても圧倒的に低コストで作れます。
公園のように、人が普段いることが前提であれば、これで十分という考え方がなりたつわけです。
なにより重要なのが、「弱いロボット」のほうが、有事の際に対応できること。
今のロボット研究において、イレギュラーな事態すべてを予測することは不可能なのですが、
弱いロボットはそれが問題にならないのです。
つまり弱いロボットのほうが「強い」ことが往々にしてある、とのこと。
実は人間にも当てはまる
この考え方、実は人間にも当てはまるのです。
例えば東日本大震災の時。
実は、助かった高齢者の中で、完全に足を悪くしている方が多くいらっしゃいました。
普段からいろいろな方の助けの中で暮らしているがゆえに、いざ津波が起きた時に、多くの方が助けに向かった、というのです。
一方で、普段お元気であるがゆえに、助けに行く人がなく、という高齢者の方も多くいらっしゃったのだろうと推察されます。
そう、実は「弱いロボット」の強さは人間にも当てはまるのです。
ここで言っているのは、ただ「弱ければいい」ということではありません。
重要なのは、「必要な時に周りに助けを求めることができるか」ということです。
弊社の顧問である大阪大学佐藤眞一教授は、自立とは「いざというときに他人が助けてくれる仕組みを作っていること」
とおっしゃっています。
自分で電球の交換ができる体力があることも勿論重要ですが、
困ったら誰かを呼んで電球の交換をしてもらえるような、友人関係や地域の関係を作っておくこと。
これが真の自立ではないか。
加齢は、今まで自分でできていたことができなくなるプロセスですし、突発的な事故が起きる可能性も上がります。
その中で、自分の能力を維持することを目指すのも勿論大事ですが、
上手に他人を頼る仕組みを作ること。
それは事前にお願いをしておくということでもありますし、そういう、「助けてあげたい」
と思わせるような人格になるということでもあります。
なによりそのような人生の方が、楽しいと思いませんか?
こころみも、そのような自立のお手伝いをしていきたいと考えています。
一人暮らし高齢者向け会話型見守りサービス「つながりプラス」好評提供中!!!