【ニュースリリース】高齢者会話サービスの会話データを認知症に関する研究に活用~世間話会話データの解析により、認知症の方の繰り返しの傾向が明らかに~( IBMとの共同研究論文が米国および欧州の国際会議で発表)

2018.06.22

株式会社こころみ(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:神山晃男)は、2017年度より日本IBM東京基礎研究所(以下IBM)と協業し、高齢者みまもりに応用可能な音声解析とテキスト解析の技術的知見を得るための研究を進めてまいりました。これは、こころみが所有する高齢者との会話ログを活用し、IBMが所有する音声解析技術とテキスト解析技術を用いた考察を行うことで研究を進めるものです。この度、医療情報学分野における主要な国際会議のひとつであるAmerican Medical Informatics Association(AMIA)およびMedical Informatics in Europe(MIE)にて論文が採択・発表されました。

今回の研究では、会話における単語やトピックの繰り返しという特徴をテーマに、株式会社こころみが持つ「継続的な世間話」のデータ(会話ログ)をIBMが解析し、認知症の方と健常の方との差異を分析しました。

従来の会話情報を用いた認知症の簡易スクリーニングに関する研究においては、1回の発話の中での繰り返しの特徴を比較する研究が中心でした。一方、観察研究では認知症の方の会話の特徴として時間や日をまたいだ繰り返しも報告されております。そこで、本研究では異なる日の会話における繰り返しの特徴を「特徴量」として数値化し、その数値を指標として認知症の方と健常の方の会話ログを識別することを試みました(図1)。こころみが保有する継続的な会話データを対象として調査した結果、異なる日の会話における単語やトピックの“繰り返し” が認知症の方では有意に増加する傾向を示すことが明らかになりました。また、本研究の提案する特徴量が、今回実施した会話ログの識別において、従来の言語解析研究において用いられてきた既存の指標より高い性能を示すことも確認されました。「またぐ」日数について探索的に評価した結果、1週間程度あけた2つの会話を対象とした場合に本研究の提案する特徴量が最も高い効果を持つ傾向が示唆されました。

認知症の方は時間や日をまたいでも同じ話題をお話しになることが多い、という傾向を定量的に評価するための特徴量を提案して評価した本成果は、こころみの持つ継続的な会話データの分析によってはじめて研究対象となったものです。

株式会社こころみは2018年度以降もIBMとの協業を継続し、株式会社こころみが保有するテキストデータだけでなく音声データを用いて、今後の超高齢社会において活用可能な技術開発のための共同研究を進めていく予定でおります。

図1release180622

<会議情報>

American Medical Informatics Association(AMIA)

https://www.amia.org/2018-informatics-summit

Medical Informatics in Europe(MIE)

https://mie2018.org/

<論文情報>

K. Shinkawa, Y. Yamada, Word repetition in separate conversations for detecting dementia: A preliminary evaluation on regular monitoring service, in Proceedings of AMIA Informatics Summit, 2018.

https://informaticssummit2018.zerista.com/event/member/470366

K. Shinkawa, Y. Yamada, Topic Repetition in Conversations on Different Days as a Sign of Dementia, in Proceedings of Medical Informatics Europe, 2018, Stud Health Technol Inform 247, 641—645.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29678039

Y. Yamada, et al., Monitoring Daily Physical Conditions of Older Adults Using Acoustic Features: A Preliminary Result, in Proceedings of Medical Informatics Europe, 2018, Stud Health Technol Inform 247, 301–305.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29677971