コメダで学んだこと その2 「お年寄り向き」のサービスや商品を作るべきではない

2014.02.27

前回ブログで、コメダ取締役時代に学んだ3つのこと その1、コミュニケーションができる場の提供を書かせていただきました。komeda

本日はその2。
「「お年寄り向き」のサービスや商品を作るべきではない」

について書きたいと思います。

コメダには、本当にいろいろな方がいらっしゃいます。
一人、二人、大人数。
若い人から、おじいちゃん、おばあちゃん。サラリーマンも、暇そうな人も。
ファミリー利用も多いですし、中には孫、子、親の3代で来られている方もいらっしゃいます。
見当たらないのは高校生くらいですね。
彼らにとってはどんなに椅子が硬くても、少しでも安いマクドナルドで時間を潰すほうがいいようです。

なかでも、他のいわゆる外食・喫茶店チェーンと比較すると、特に高齢者の来店比率が高い。
スターバックスではそもそも注文が難しい。
ファミレスは高齢者にとって、あまり行きたいと思う場所ではない。

では、コメダが高齢者向けに何か特別なことをしているのか?高齢者用の設備を入れたり、高齢者用のメニューを導入しているのか?
答えは、表面的にはNOです。
「高齢者向け」に何かをしたことと言うのは、コメダでは一度もありませんでした。

「表面的」にNOとはどういうことでしょう?
「高齢者向け」はない。
しかしどんな人でも使いやすいような工夫を、誰にとっても快適でいいと思えるサービスと商品を目指している。
それが結果として高齢者の方も来やすい店になる、ということです。


お店は、ほとんど平屋でスロープが入り口についていて、ベビーカーも車いすも簡単に入れます。
トイレは広く、ウォシュレット完備でゆっくり過ごせます。
メニューはシンプルで飽きの来ないもの、誰にでも馴染みがあって、想像がつくもの(ただし、シロノワールは別です)。


ごくごく一部のノウハウに過ぎませんが、
これらは、高齢者を狙って高齢者の来店を増やす為にということではなく、
来ていただくお客様全員の為に、お客様が喜ぶにはどうすればいいかを考え続けて少しずつ進化してきたやり方です。

結果として、体が少し不自由でも、新しいことに抵抗がある人でも心地いい。
何よりお店が広く、椅子がゆったりしていて、誰でも居心地がいい。

そんなところが皆様に支持されて、結果として高齢者の方「にも」来ていただける。そんな状況になっています。
コメダの来店客層は、高齢者が多いのではなく、日本の人口分布に近いと言えるでしょう。

残念ながら、多くのファミリーレストランはそうした思想に欠けていると思われます。
効率優先で1階部分を駐車場にしたため、2階までは急な階段を登らなければならない。

こんなところで大きく差が出ているのです。


特に私がその時感じたのは、「高齢者向け」ではなく、「一人一人がその時何を快と思うか」を優先すべき、ということでした。
変に「高齢者向けですよ」と言ってしまうと、高齢者ご自身は、自分はまだまだ若い、年寄り扱いするな、と思いますし(当然の心理です)、
高齢者でない方にとっては、自分向けでないお店だと感じてしまい、両方が離れてしまうことになりかねません。
「高齢者向けじゃないけど、高齢者にとっても居心地がいい」これが高齢者が求めているものなのだと、強く感じました。

こころみのサービスでは、お話相手のことを「高齢者」だとは、実は考えていません。

○○さんという方がいて、その方とお話する。
その方は少し耳が悪い。外出するときに気遣いをしたほうがいい。
高齢者は経験豊富で思いやりのある方が多いですから、コミュニケーターは自然に相手を尊敬したいと言う気持ちになり、
結果としてよいサービスにつなげられる。
当然、下の名前にちゃんづけしたり、「おばあちゃん」と呼びかけたりすることは、絶対にありません。
一人の名前のついた尊敬すべき方としてお相手をさせていただきます。

ここで「高齢者は弱者。いたわらなければならない」とか、「我々は面倒を見てやっている」といった考えが少しでも混じったら、
信頼関係を作ることはできません。

ですから、わたしたちは「お年寄り向き」にはサービスを提供しないのです。

この姿勢は、今後も変わることなく続く、こころみ最大の価値として守っていきたいと考えております。