高齢者マーケティングはなぜ失敗するのか

2014.07.02

先日、とある事業会社の方とお話をしていて、「65歳と75歳では全然違うから、マーケティングは別物として考えないといけないですよ」と言ったら、大変驚かれました。

高齢者集団

今まで高齢者というものをそれ以上分類しようと考えたことがなく「高齢者は高齢者」だと考えていたというのです。

改めて、企業から見た高齢者マーケティングが難しいのだということを再認識しました。

高齢者マーケティング、難しいとよく言われます。
特に、高齢者をひとくくりにするのはいけない、ともよく言われることです。
15歳と25歳に対して同じマーケティングしないように65歳と75歳を分けるのは言われてみれば当たり前。

でも分かっていてもなかなかできない理由が、裏に潜んでいることが見えてきました。

3つの理由をまず考えました。

① 「高齢者」をひとくくりにしてしまう

上の話です。65歳、75歳、85歳、95歳、体力も違えば考えることも違う。
引退してから経った時間も違えば、子供の年齢も違います。
それなのに、世間一般はいまだに一つのラベルしか持っていない。
一時「後期高齢者」という言葉を使おうとしたことがありましたが、まあこの言葉は駄目ですよね。

② マーケターにシニアがいない

65歳を超えるとほとんどのサラリーマンは引退します。
そのため、65歳以上のマーケターはほとんどいません。
中学生向けのマーケティングであれば、大概のマーケターは中学生の経験があるのでそれを敷衍できます。
が、まだ経験したことのない立場の気持ちを想像することが難しいのです。

③ 細分化するための肩書・プロファイルが見えない

上記のように細分化されたマーケットなのですが、いざターゲティングしようとすると難しい。
なぜなら、企業を引退してしまうことで勤務先や年収といった情報が失われ、
実態の生活ぶりや嗜好を推定する手がかりが企業側から失われてしまうからです。
有効なのは預金残高が分かる銀行主催の「富裕層向け資産運用セミナー」くらいでしょうか。

そして何より重要なのは、これらの背景に最大の問題である「個人差がとてつもなく大きい」が潜んでいるということです。

①で年齢による差が大きいと書きましたが、実は年齢による差よりも、個人差のほうが遥かに大きい

何十年の積み重ねで、若い人間とは比べ物にならない差が、同じ年齢の方同士で出てきます。
体力、経済力もそうですが、なにより考え方や日々の暮らしの習慣で差が出る。
70歳を過ぎても毎日肉を食べ、iPadの新型が出るたびに買う方もいれば、昔からごはんと納豆だけ、家にはテレビと固定電話しかない、という方も多くいらっしゃいます。
そしてこの個人差は、長年の積み重ねで出てきているものだけに、容易に変えることができません。

高齢者向け商品を見ていて一番多い勘違いは、「この新しい機械を使うとすごく便利になるから、これを使ってもらえばいい。

だってうちの親はこれくらいの機械喜んで使っているよ」というものです。
自分の親が、一般的な高齢者の標準と決めてしまうのです。
しかし、新しいものを使わないと決めた方は、長年の積み重ねでそう決めているので、多少便利になるくらいの動機では決して習慣を変えません。
そんな方を、自分の親が代表的な高齢者と考えた瞬間に逃してしまうのです。

高齢者マーケティングで失敗している商品を見ると、大概「考え方の個人差がものすごく大きくなっている」ことに気づいていない。
あるいはセグメンテーションしようとしたときに、個人差の大きさに途方に暮れてあきらめてしまう。
これこそが高齢者マーケティングの最大の障壁ではないでしょうか。

ではこれを解決するにはどうすればよいでしょうか?

私の考えはものすごくシンプルです。一人ひとりの考えに寄り添うこと、です。
それができないサービスは、結局受け入れられないでしょう。

幸いにして、こころみはそれができる会社ですし、「つながりプラス」はそれが最大の強みです。
今後もおひとりおひとりに正面から向き合い、サービスを提供していきたいと考えています。