がんと認知症

2014.04.19

ふと、がんと認知症って似ていると思いました。

mirai

がん。

がんは、ここ数十年で位置付けが大きく変わってきたと思います。

そもそも戦前は、がんにかかる人はそう多くありませんでした。
平均寿命が30代で、がんにかかる前に亡くなることが普通だったからです。
戦後、衛生環境や栄養環境の改善によって平均寿命が伸び、50代、60代になってがんにかかる人が出てきました。
つまり、長生きすることで「がんにかかることができる」世の中になってきたわけです。

それでも昔はがんは不治の病と言われ、タブー視されていました。
がんが見つかっても本人に告知をしないほうが一般的で、世間からも半ば死人扱いをされるような状況。
ある日突然、悲劇に襲われる、そんな位置付けだったのではないかと思います。

今は日本人の1/2ががんにかかり、1/3はがんで亡くなる時代です。
もちろんがん自体による苦しみや死の恐怖が変わるわけではありません。
それでも早期発見による治療や手術の技術向上により、生存率は格段に向上。
かならずしも不治の病ともならなくなってきました。

あわせて、人間ドックによりがんの早期発見をするのも一般的になりました。
少しでも早く見つけることがよい結果につながることが周知されています。

そして医療の現場では、どう治すかとあわせて、患者ががんとともにどう生きるかに着目するところが増えてきています。
がんになったらおしまいという世の中から、治せるうちに見つけて治す、あわせて治せない時に備えてよりよく生きる仕組みを考える。
そんな時代になってきています。

まとめると、時代と共に以下のような変化があったのではないか。
① 誰でもかかる病気に:昔は寿命の関係で、そもそもがんにかかる人が少なかったが、長生きにともなってがんにかかる人が増えてきた
② 不治の病、タブー:当初は不治の病であり、がん自体がタブー視されていた。
③ 早期発見の普及:その後早期発見の必要性が認められ、今では多くの人が早期発見メニューを人間ドックで受けている
④ 共に生きる時代:がんと共にどのように生きるか、が考えられる段階に来ている

さて。ここからが本題です。

認知症について考えていたときに、がんと同じ道をたどっているのではないかと気づきました。

①誰でもかかる病気に
認知症は、65-70歳の有病率は3%以下ですが、85歳を過ぎると30%超の有病率となります。
日本の平均寿命が伸びたことにより、「認知症にかかることができるくらい長生きする」世の中になってきたのです。

②不治の病、タブー
今、認知症を完全に治すことは難しいと言われています(特発性正常圧水頭症など、治すことが可能な認知症もあります)。
世の中では認知症はタブー視されており、診察に行くこと自体を拒否する方も少なくありません。

③早期発見の普及
早期発見が極めて重要ですが、まだまだその事実についての周知は足りないと思います。
いずれ、年をとったら誰もが毎年検査を受ける、そんな時代が来るだろうし早くそうすべきだと考えます。

④共に生きる時代
そして、認知症とともにどう生きるか、を真剣に考えるべき時代がいずれ来ると思います。
とくにがんと異なる点として、地域社会がどう受け止めるのかとうことも含めて日本全体のコンセンサスを作らなければなりません。

がんと比べると、①を経て②の段階にいま来たところ。
世の中で患者さんが一般的になる一方で準備が充分に出来ていない。
そんな状況に近いのではないかと思います。
恐怖感だけあって適切な対処ができていない状況ではないか。

これから③、④の世の中になるように、微力ながら弊社も努力していきたいと考えています。

そのためには正しい知識の提供、前向きな対処の方法を提示し、弊社の見守りでサポートできる範囲を増やす。
目指すのは、認知症の方を受け止められる社会にしていくこと。
地域社会の仕組みの中に弊社も参加し、そんなことのお手伝いができればと考えています。